国語

問題

Aさんの学級では、国語の授業で、「環境問題を考える」というテーマで選んだ本の
内容を紹介するころになりました。Aさんのグループが選んだのは、花里孝幸
(はなざとたかゆき)氏が書いた『ミジンコ先生の水環境ゼミ』という本の一節です。
これを読んで、あとの問いに答えなさい。((1)から(14)は段落につけた番号です。)

(1) 現在、我々はさまざまな環境問題を抱えており、その解決が大きな課題になっている。しかし、環境問題は複雑で、解決は簡単ではない。なぜ難しいのか。湖の富栄養化※に伴う水質汚染問題を例に、そのことを考えてみる。

(2) 湖の水質汚染問題は流入してきた窒素やリンからなる栄養塩※によって引き起こされる。だが、窒素やリンはもともと自然界にあるもので、すべての生き物の存在に必須(ひっす)の物質だ。本来は、豊かな森林をもつ山から流れ下る川によって供給され、湖の生き物たちの生活を支えてきた。この物質が水質汚染問題を起こしたのは、人間が排出した大量の栄養塩が湖に流入したのが原因である。

(3) ところが、大量の窒素やリンが与えられても問題を起こしていないところがある。農地である。農地ではこれらの物質を含んだ肥料を積極的に撒(ま)いて土地を富栄養化されている。農作物を育てるためだ。ここでは窒素やリンは大切な物質であり、悪者扱いされている湖とはまったくことなっているのである。畑では地表に植物、すなわち農作物が繁茂するが、湖でも植物であるプランクトンのラン藻が大量に増えて水面にアオコ※が発生する。

(4) では、なぜ湖では問題となるのか。これは、人間が農地と湖に対して求めているものが違うからである。畑では、人間は地上の植物の成長を求めており、その下にある地中の土そのものには構っていない。それに対し、湖に求めているものは水面下の水の質である。水面にアオコが発生すると水がくさくなり、増えた有機物の分解によって深水層が酸欠状態になるのが困るのである。

(5) 畑でも土の質を重視する。たとえばよい土の条件として、水もち水はけがよく、腐食質を含んで有用微生物の多いことがあげられる。しかし、それはあくまでも地上の作物がよく育つか否(いな)かを基準とした評価である。もし湖面に発生するアオコを求めるのならば、かびくさくて酸欠になる水が望ましい水質ということになるだろう。

(6) 農地と湖。窒素とリンはどちらでも同じはたらきをしているのに正反対の評価が下される。これは人間の身勝手によるものだ。

(7) 湖の富栄養化はとにかく悪いことで、水質をじょうかすることがどこの湖でも必要であると多くの人が考えているように思われる。確かに透きとおった水をたたえた湖は観光客が求めているものであるし、湖水を水道水源として利用する場合には澄んだ水が必要である。しかし、それを歓迎しない人たちもいる。漁業関係者である。なぜなら、水質浄化は植物プランクトンを減らすことであり、そうなるとそれを餌(えさ)とする動物プランクトンが減り、さらにその捕食者である魚が減ることになるからである。最近になって水質浄化が進んでアオコの発生量が大きく減った諏訪(すわ)湖では、湖底に生息するユスリカ幼虫が減少し、それを餌としていた魚の成長が悪くなり問題となった。

(8) また、水草は水質浄化の効果があり、多様な生き物たちの生息場となることから、多くの湖でそれを増やすとり組みなられている。しかし、船の走行障害になるため、水草の増加は漁師には必ずしも歓迎されない。諏訪湖では水質浄化が進んで湖水の透明度が上がった結果、水草が大量に増えはじめたが、漁業関係者は困惑している。

(9) ここで考えなければならないことは、湖に求めている環境も異なるのである。言いかえれば、湖は異なった目的をもったさまざまな人々によって利用されているということだ。このことが湖の管理を難しくしている。

(10) ではどうしたらよいのだろうか。「とにかく澄んだ水を求める」ということが必ずしもよいこととは限らないことを理解し、それぞれの湖で多くの人が受け入れられる環境・生態系の姿を決め、それに向かって湖の管理を進めるのがよいと私は考える。そのためには、環境を変えたときに生態系がどのように変わるのか、それを予測することが必要だ。

(11) 水質浄化が進むと魚が減ることからわかるように、湖の水質が変われば生態系が変わり、我々の生活に影響が及ぶことになる。また逆に、生態系が変わればそれが水質を変え、やはりわれわれの生活に栄養する。

(12) 近年の研究で、魚が増えると湖の水質汚染が進むことが明らかになってきた。魚が大型ミジンコのダフニアを食べてしまい、天敵のミジンコが減ったことで汚濁の原因となる植物プランクトンが増えるのである。また、コイなどの底生魚は、湖底の泥をかき回して泥の中の栄養塩を水中に回帰させて水質汚染を助長する。したがって、漁業活動で魚を放流することは、生態系を攪乱(かくらん)して水質に影響を及ぼす可能性がある。

(13) 農業や漁業は、本来は自然の恵みを利用した経済活動である。ところが、現在では、生産性を上げるために肥料をまいたり魚の放流をするなど、自然に対して積極的なはたらきかけをしている。これにより自然に負荷を与えているのである。したがって、農業や漁業の関係者は、自らが自然の恵みを受ける立場であるとともに自然に負荷を与える立場であることを認識し、その場や地域で求められている環境と共存できる農業や漁業のありかたを考えるべきであろう。これはすべての人にあてはまることでもある。

(14) 環境問題は人間活動が引き起こしたものであり、その評価は人間の価値観に基づいている。ところが、その価値観は人によって異なる。これが環境問題を複雑にし、解決を難しくしているといえるだろう。その解決のためには、市民それぞれが環境問題に対する正しい認識をもつことが必要だ。それぞれが自ら学び、価値観の異なる人の考えも考慮した総合的な視点をもたなければならない。我々をとりまく環境をどうするのか。それを決めるのは我々自身である。

(花里孝幸著『ミジンコ先生の水環境ゼミ』による。一部省略がある。)

※富栄養化……窒素、リンなどの栄養分が増えること。
※栄養塩……海水や淡水に含まれ、プランクトンの栄養になる成分。
※アオコ……湖沼(こしょう)のプランクトンが異常増殖をし、水面に薄皮あるいは塊状として浮いているもの。

問い

Aさんのグループでは,「環境問題を考えるうえで大切なこと」について,この文章から説明しようと考え,(14)の段落から,次のようにまとめました。空欄にあてはまる内容を,価値観,認識,環境の三つのことばをすべて使って,五十字以上,七十字以内で書きなさい。ただし,三つのことばを使う順序は問いません。

環境問題の解決に向けて,【     】を決めることが大切である。

解答欄

現在の文字数=60字

  他教科へ


模範解答はランダムに変わります。